あれは約3年前、2018年11月18日のことだった。群馬県日野カントリーオフロードランドで開催された日野ハードエンデューロ(G-NET2018最終戦)の、今ではもう使われていないG-NET最終セクション「Finish Hill」(現在の「ヤブ坂」の隣あたり)の頂上で、高橋博と山本礼人による壮絶なチャンピオン争いがあった。最後の坂を先に登った方がチャンピオンというシーンだ。結局、その戦いは高橋博が制し、2020年怪我により欠場するまで、高橋の黄金時代は続いた。

まさかの2周!?
アヤト、チャンピオン獲得

今大会はレース時間3時間30分+計測30分の合計4時間。なんと山本は、約40分を残して2周目を終えて還ってきた。あのエムスリーを、周回遅れがたくさんいる中、すり抜けて登頂することは不可能と思っていたのだが……!

結果、2周できたのは山本だけで、文句なしの優勝。2位は原田。3位大塚、4位佐々木、5位三輪。6位鈴木。多くは2周目の「エムスリー」でタイムアップを迎えた。

日野ハードエンデューロの表彰の後、G-NETチャンピオンの表彰が行われた。

シャンパンファイトはなかったが、G-NETライダーを中心とした有志が山本を祝って盛大にスプラッシュ! 山本がどれだけ他のライダーに愛される存在かがよく伝わってくる。

「すごく難しかったですね。下見の感じですと、3周いけるかな? と思ってたんですけど、下見禁止エリアがすごく広くて、でもギリギリ2周できましたね。

最初の穴でいきなりフロントが刺さって前転しちゃったんです。ワイヤーマウンテンでは僕がスタックしてたら大塚さんがすごくいいラインで直登して行ったので、それを見てすぐに一回降って、同じラインでクリアしました。そのあとの熊沢ではロッシさんに抜かれてしまって、BOCヒルの入り口のところで、平たい石がいっぱいあるガサガサの路面でけっこう時間かかっちゃったり。最後のエムスリーの中段で大塚さんに譲っていただいてトップに立ってからはずっとトップでした。時間的に2周目無理かな? と思ったのですが、コースがすごく楽しかったのでチャレンジして、2周目のエムスリーでは葛城組の方にたくさん助けていただいたおかげでなんとか2周目も間に合って、すごく嬉しいです。

ハードエンデューロを始めて10年、G-NETに挑戦し始めて7年です。本当にすごいたくさんの方に応援してもらって、特に今年はGASGAS高槻さんやビバーク大阪さん、シンコータイヤさんをはじめ、たくさんのスポンサーさんに協力していただき、すごくいい環境でレースをさせてもらえています。

本当に、やっとですね。2018年の最終戦の時にここで幻のチャンピオンで終わって、そこから気持ちを切り替えて3年、やっと本当のチャンピオンになれました。ロッシさんはやっぱりめちゃくちゃ上手くて強いんですけど、今年はやっぱりタイスケさんとケンジさんが強力なライバルでした。

去年まではセクションの間の移動路がどうしても休憩場所だったのですが、ビバーク大阪の杉村社長に誘っていただき、今年からJECに出るようになったら、移動路も飛ばして走れるようになって、体力も上がったし、平均速度も上がりました。特にこういう広いコースでは移動路のスピードは大事ですね。休憩しなくなったことで気持ちが切れなくなったのも大きいです。

僕にとってはG-NETのチャンピオンはゴールではなくて、ここから海外のレースでどこまで通用するのか。アジアでは一回勝っているので、やっぱり次はプロのいるヨーロッパ。SEA TO SKYとかルーマニアクスに挑戦したいと考えています」と山本。

また、表彰台では「僕はケンジさんとかロッシさんの背中を見て、彼らに勝てるようなライダーになりたいと思ってずっと頑張ってきました。本当にたくさん応援していただいて、ありがとうございました。僕まだ20年くらいこの競技できるので、結構しぶといと思いますので、よろしくお願いします」と語った。

特に現場にも駆けつけていたシンコータイヤは2014年から山本をサポートしている。「当時から良いものは持っていましたが、まだ波が激しくて、安定感に欠けていましたね。当時に比べると体力やテクニックだけじゃなく、精神力も含めて、いろんなところが成長したと思います」とシンコータイヤの木村氏談。