「マジもう無理」
究極の押しが勝負を分けた、エムスリー
「エムスリー」とは「マジもう無理」の頭文字「M」が3つから命名されたもの。それほどに、難易度が高いということだ。下から見上げると、とにかく長い。最初はもちろん普通にヒルクライムで、アクセルを開けて一気に登っていくのだが、中盤でコーステープは一気に狭まり、むしろそこからが「エムスリー」の本番なのだ。
取材班がエムスリーに着いた時、目に飛び込んできた光景がこれ。7合目くらいでマシンを降り、ヘルメットを脱いで息を整える大塚。現在のトップだ。
後ろから追いついてきた山本に、先を譲る大塚。年齢にして大塚が50、山本が26。ほとんど2倍の年齢差がある。体力的なものはやはり山本に分があるだろう。
繊細なアクセルワークと絶妙なライン取りで本当に少しづつだが、Zの字を描くように着実に前進する山本。
乗るところ、押すところの判断が難しい。トップに立った山本は、前走車のいないところでラインを探りながら登っていくことになった。
大塚も再スタートし、山本が進んだラインをトレースしていく。
ヒルクライムの途中でフロントを上げてバイクの向きを変えるフローティングターンのテクニックがとても重要なセクションだった。しかし斜度がキツすぎるため、迂闊にやるとすぐに捲れて真っ逆さま。みな慎重に少しづつフロントを振っていた。そんな中、大塚が見せたトリックがこちら。太い木に足をかけて体重を預け、バイクを支えながらフロントを振っている。
ここで鈴木に続いて高橋、原田、水上、ZERO、久留米、三輪嘉彦、佐々木、永原達也、泉谷之則、和泉拓、木村つかさ、濱原颯道、メイドちゃんなど、続々とトップライダーが集まってきたのだ。
ここでまずトップでエムスリーを抜けたのが、山本。
続いて大塚が9割5分まで進む。が、登頂を目の前にスタック。
その隙に2番手に躍り出たのが、原田。結果、独力で「エムスリー」を登頂したのは、ここまで3人となった。G-NETクラスは基本ノーヘルプが大前提なのだが、観客はNGでも「ライダー同士の助け合い」は認められている。鈴木健二が号令をかけ、ここから先は引っ張り合いになって、たまたま押しやすいところにいたライダーから順に助け合い、押し上げたという形に。
そして佐々木、三輪、鈴木、泉谷の順で登頂、ゴールへ。
「エムスリー」の開拓を担当したスタッフ新舘氏は、トップライダーのマインダー(トライアル用語でライダーに助言を与えるサポートスタッフのこと)としてラインのアドバイスなどを行っていた。「ノーヘルプ3台は、ほぼ狙い通り」とご満悦の表情。
和泉が持ってきたロープが大活躍。和泉がセクションを抜けても受け継がれ、その後、何台ものライダーを助けた。
助けてもらい、登頂したライダーも戻ってきて、自分を助けてくれたライダーを助ける。エルズベルグロデオのトップ争いでも同様の姿が見られる。これもまた、ハードエンデューロの醍醐味なのだ。
メイドちゃんも献身的にヘルプ。
濱原もしっかり登頂を果たし、G-NETクラスを周回。