モトクロス大国であるアメリカ、そして世界グランプリを持つ欧州において、活躍できる日本人がいなくなって久しい年が続いた。興行的に最高峰のAMAスーパークロスでは、成田亮の3位表彰台を最後としていたが、2020年を境に時代は変わろうとしている。現18歳、AMAのプロクラスで活動する、下田丈の台頭だ。甘いマスクに、すらっとした長身、世界を狙えるポジションで戦う下田の2021年現在をまとめてみよう。
ポイント5「鍛え抜かれた体幹、若手に珍しい追い上げスタミナタイプ」
下田のライディングにおいて、持ち味はタフさ。日本でも世界でも、アマチュアからプロに移行する際に壁として立ちはだかるのは、スタミナだ。キツイ無酸素運動の連続になるスーパークロス250SXで15分+1周、モトクロスでは30分+1周を2ヒート。これを毎週、いやコロナ禍の特殊なスケジュールでは、2週間で3レースという隙間の無いスケジュールでこなしていくことになる。
プロクラスは、特に序盤のスピードがとてつもない。先頭を逃がしてしまえば取り返しが付かないことになるので、大勢が固まるまでは、各ライダーが死にものぐるいで飛ばしていくのである。下田は、実際にはこの序盤におけるスピードが目下課題となっている。スタートで10番手ほどに落ち着いてしまったあと、トップ集団を逃してしまう展開がよくみられるのだ。
だが、そこからの下田はとても強い。ほとんど転倒による離脱はなく、着実にラップを刻んで追い上げていく。2020年の後半は、ほとんどがこのタイプのレースで、表彰台グループまで届かずともシングルフィニッシュは固いというところだった。
2021年の開幕戦では、スタートを成功させることで最高位4位をゲット。安定感と、序盤の展開を奪えれば、表彰台の常連も遠い話ではないことを予感させたのだった。
下田は「いまは、全体的に身体を作っています。特に、心臓を大きくするためのトレーニングがメインですね。そのために、足の筋肉が必要になっています。具体的には、低心拍数で90〜120分くらいの連続した負荷をかけてから、急激に上げるようなトレーニングをしています」とのこと。成長期を経て、アマチュア時代から格段に身体もできあがった下田は、新時代のライダーらしく体幹でライディングするフォームをとる。