モトクロス大国であるアメリカ、そして世界グランプリを持つ欧州において、活躍できる日本人がいなくなって久しい年が続いた。興行的に最高峰のAMAスーパークロスでは、成田亮の3位表彰台を最後としていたが、2020年を境に時代は変わろうとしている。現18歳、AMAのプロクラスで活動する、下田丈の台頭だ。甘いマスクに、すらっとした長身、世界を狙えるポジションで戦う下田の2021年現在をまとめてみよう。

下田丈(Shimoda Jo)

2002年生まれ、18歳、三重県出身。2019年AMAプロデビュー、2020年AMAスーパークロスデビュー。2019プロモトクロス250ランキング26位、2020スーパークロス250SXイーストランキング3位、2020プロモトクロス250ランキング11位。2021年はチーム「Monster Energy/Pro Circuit/Kawasaki」からKX250で参戦中

※AMAスーパークロス…全米のスタジアムで開催される、全米選手権。広大なアウトドアでおこなわれるプロモトクロスとは異なり、1周1分未満でショーアップ要素の強いハードなコースで競われる。アメリカにおいてメジャースポーツで、レジェンドのリッキー・カーマイケルの資産は2500万ドルと言われるほど成功している興業

ポイント1「2020年世代のルーキー組、最高成績」
ルーキー・オブ・ジ・イヤーも納得の安定感

アメリカのモトクロスは、プロで活躍するための途がしっかりと確立されている。子供の頃から、地方選手権を勝ち上がり、年に一度のテネシーでおこなわれる“ロレッタリン”全米アマチュア選手権で成績を残していく。この過程で有力なライダーは日本の4メーカーおよび、KTM・ハスクバーナから青田買いされ、育成チーム(すでにファクトリーとアメリカでは呼ばれる)と契約。だから、1年ごとに世代が確立されていて、だいたい速いライダーは子供の頃からの馴染みだったりする。

その中でも、プロクラスで成績を出せるのは年間数名。下田がプロデビューした2019年は、オーストラリアから来たジェット・ローレンス、KTMのピアース・ブラウン、ハスクバーナのジャレク・スウォルが記憶に残るところで、まれに見る豊作の年。だが、彼らもデビューに際して予選落ちを喫したりするほど、難しい世界だ。

2020年、ガイコ時代

下田はそのルーキーの中で、「ルーキー・オブ・ジ・イヤー」に輝いた逸材。2020年のスーパークロス最終戦、下田丈はメインイベントを8位でフィニッシュし、イーストコーストのシーズンランキングを4位から3位に上げてシーズンを終えた。

ルーキー・オブ・ジ・イヤー2020を獲得

最終戦は、250クラスはシュートアウト。下田の参戦していたイーストコーストだけでなく、ウエストコーストを交えたレースになる。つまり、層の厚さは単純2倍。それだけに、先の読めないレースだった。