今、ハードエンデューロというジャンルはかつてないほど陽の目を見ていると言ってもいいだろう。クロスカントリーやオンタイムエンデューロのウラで、コアなファンに支えられ脈々と続いてきたハードエンデューロが、CGCやクロスミッションといった、若者の心を捉えたイベントの台頭により、表舞台に出てきた、と言ってもいいかも知れない。その影響は、頂点にある全日本ハードエンデューロ選手権「G-NET」にも及んでいる。今この時代に、絶対王者ロッシから、チャンピオンの座が移ったことは、日本中で着々と育ちつつある20〜30代の若手ライダーたちの時代が始まることを予感させるものだった。

タイスケ、アヤト、森のガチバトル

鈴木健二、山本礼人、水上泰佑の3人が1ポイント差で並び、G-NET2020最終戦、HINO HARD ENDUROを迎えた。レースはG-NETクラスとハードクラスの混走。スタート順はG-NETの黒ゼッケン以外が最初で、タイスケやアヤト鈴木健二らG-NET黒ゼッケン。最後にハードクラスとなった。

一周目、最初に第4セクション「ヤブサカ」を登ってきたのは佐々木文豊だ。佐々木は今大会7位、今シーズン通算ポイント35ptで来年は黒ゼッケン5をつける。

鈴木健二ら黒ゼッケンライダーがたどり着いた時にはすでにヤブサカはハードクラスライダーで渋滞していたが、さすがは黒ゼッケン。素早く空いているラインを見極め、あっさりと登頂していった。しかし鈴木は残念ながら一周目の第33セクション「Beta Mountain」でクラッチを使い切り、リタイヤ。「クラッチプレートは新品を入れてきたんですけど、どうやら前回のレースでミッションオイルが減っていたらしいです。完全に整備不良ですね」今シーズンのチャンピオン候補の一人が、早くも脱落する形になった。

二周目に突入した順番は山本礼人、森耕輔、水上泰佑。アヤトと森はつかず離れず、まさにテールトゥノーズで僅差のバトルを繰り広げた。

何度かトップは入れ替わり、第17セクション「フラット林道」でも白熱のシーンが見られた。アヤトが5合目ほどでイゴつく間に森が8合目まで一気に登るが、残り2合を押し上げるためのベストラインに入れず、その隙にアヤトが抜き返す。さらにアヤトが登頂した直後に、少し離されていたはずのタイスケが現れた。