世界中のダートバイクシーンにおいて、スーパークロスは異色だ。メジャーリーグが開催される、一線級のスタジアムを満員にする人気、テクニカルなトラック、関わる人員の数々。このスーパークロスで結果を残すことは、多くのダートバイクファンにとっての悲願。日本のモトクロスライダーにとってもそれは例外ではない。だからこそ、ルーキー下田丈が残した足跡は輝かしい。

写真は、タンパラウンドより

偉業を成し遂げた最終戦。その3日後には日常が始まる

2020年のスーパークロス最終戦、下田丈はメインイベントを8位でフィニッシュし、イーストコーストのシーズンランキングを4位から3位に上げてシーズンを終えた。ルーキーの中でも、飛びきりの成績で新人賞にあたる「ルーキー・オブ・ジ・イヤー」を獲得している。

下田自身は、その成績に対して満足しているかというと、100%の満足ではなさそうだった。「普通にうれしい、ですね。ルーキーにしては、よかったほうだったなぁ、くらいの感想です。ジェット・ローレンスが速くてめだっていましたし、外からみればジェットのほうが見ていて面白かったでしょう。一緒にプロに上がったライダーですし、勝ちたかったです。アウトドアでは負けたくないですね。

チャンピオンを獲ろうと思うと、安定して成績を残すことが大事です。チームの評価も同じで、自己評価としても、安定感を求めています」と言う。チームの中でも、ジェットとは仲がいい。下田とジェットは、ワールドジュニアの65cc時代からライバルだったのだが、おそらくこの関係は下田がモトクロスを続けていく限り続くだろう。それだけに、久々に同じレースを走った今回は、だいぶ意識をしていたようだった。「ジェットはスムーズさや安定感はないんですが、一発のスピードが速いですよね」と。

「絶対に10位には入りたかったです。それがミニマムの条件でした」と下田。ポイントランキング上、3位に入るためには10位が必要だった。逆に言えば、10位で十分だったのだが、下田は「僕はロレッタリンで1-1をとった時も、守りに入ったりはしていません。守りに入ってはダメだと思う。全部、勝ちたいって気持ちじゃないと、結果はついてこないです」と。攻めに攻めた最終戦、結果は8位で余裕をもって目標を達成した。1ヶ月ぶりに拠点のカリフォルニアに戻り、ゆっくりしているレース翌日に、インタビューに応えてくれた。「明後日からアウトドアに向けて乗り込みます」と言う。休みらしい休みはない。下田達、プロライダーはスーパークロスと、アウトドアモトクロスのシーズンを行ったり来たりしながら、プロの日常を送る。