3月30日。FIM(国際モーターサイクリズム連盟)は、今年8月に開催を予定していた、第95回FIMインターナショナルシックスデイズエンデューロ)・イタリア大会(以下ISDE)を1年間延期し、2021年の同時期に開催する方針であることを発表した。同大会は、1913年に第1回大会が開催されて以来、毎年各国の持ち回りで開催が続けられてきたが、開催が休止されるのは、第二次世界大戦以来の出来事となる。

モーターサイクリストのオリンピック

ISDEは、毎年500~600名前後の参加者が、約40か国から集まる大規模なイベントで、チーム関係者、運営スタッフだけで数千名。

伝統的にエンデューロの人気が高いイタリアでの開催となると、6日間では延べ十万人以上の観客が集まることが見込まれる。数百キロに及ぶコース設定や、スタッフの手配など、1年以上をかけて準備してきた大会とはいえ、依然、COVID-19感染拡大が止まらない状況を勘案すると、やむを得ない決断と言えそうだ。当初の予定では、3月31日までが、参加希望者のプレエントリー期日だったが、先週になって4月10日まで受付をストップすると発表されたばかりだった。FIMとしてはできるだけ早い発表によって、影響を最小限にする狙いがあったものと見られる。

ISDE2019大会に日本代表チームとして参加した渡辺学
Photo : 稲垣正倫

「簡単に導き出した結論ではない」

FIMのジョルジュ・ヴィエガス会長は次ように声明している。「この数週間、様々な観点から開催について検討を加えてきましたが、最終的な結論として、イタリアでの開催を1年間延期することになりました。これは簡単に導き出された結論ではありません。しかし、FIM、イタリア協会、そして地元の運営関係者としっかりと話し合い、公平に下されたもので、2021年に無事、ISDEイタリア大会を開催するための正しい判断だと信じています。FIMと、モーターサイクルスポーツを愛するファミリーは、COVID-19によって困難に直面している人たちの支援を続けます」。

この難局に打ち勝つものは

先にも書いたが、100年以上に渡るISDEの歴史の中で、開催が中止されるのは、第一次世界大戦による1915~1919年まで、そして第二次世界大戦による1940~1946年までの7年間に続いて3度目。「モーターサイクリストのオリンピック」として、世界中のライダーが目標にし、楽しみにしているイベントが中止されるという発表は、現在の状況が、いかに困難なものであるかということを我々につきつきているかのようだ。

同時に、こうも思い出したい。第一次世界大戦の時、第二次世界大戦の時も、ライダーたちは、終戦の翌年には再び世界中から、それも西側諸国も、東側諸国も関係なく集まって、ISDEを開催し、腕を競い合ってきたということ。ライダー、スポーツマンの友情と団結を信じて、2021年の開催を楽しみに待ちたい。