小学生の頃だったろうか。今から30年前ほどに、MTBがブームになった。今思い起こせば、最新のMTBに比べるべくもないロースペックで、ロードバイクのようなディメンジョンだったんだろう。でも、その当時は未知のダートを突き進める、かっちりしたはじめてのスポーツ自転車で、それがどうしても欲しくなった。Honda ADV150は、そんな青い思い出を思い起こさせてくれた。
SUVに大事なのはライポジだ
ADV150のハンドルに手を添えると、明らかにこれはコモディティ化したスクーターとは違うモノだと思った。ストレート気味なバーハンドルは、ダートバイクのムードを高めてくれる。
以前、自分が所有しているクロスカブ110のハンドルを、ダートフリークのほんの数度ベンドが違うハンドルに変えたのだけれど、これが素晴らしく良かった。土の上での押さえ込みが…などと言うつもりはない。この手のSUV的なマシンに大事なのはムードだと考えている。
話を戻そう。
ADV150のライポジは、絶妙にダートテイストだ。これなら、重たそうなエンジンがついているリアまわりを少しは振り回せるかもしれないと思わせてくれる。実際に走り出してみると、ハンドリングはとても素直で、スクーター然としていて楽ちんなのだけど、肘を少し張ってみると「リアで曲がれるような気」がしてくる。必要ないけど、イン側の足を出したくなる。
最初に言っておくけど、ダートを思い切り走れるわけではない。少なくとも、僕の拙い腕前では、ダートを思い切り走れるような走り方をみつけることができなかった。なにぶん、マシンをホールドできる場所が少なすぎるし、スタンディングするにはちょっとポジションが狭すぎる。その点、兄弟分のX-ADVはスタンディングできる余裕があったし、くるぶしでグリップできる範囲があった。とはいうものの、こんなのはどうでもいいことだ。
大事なのは、気分を盛り上げてくれるライポジ。そう、この辺が30年前のMTBで感じたものとすごく似てたのだ。はじめての一文字ハンドルの高揚感。アレが、スクーターでよみがえる。