昨年、開基150年を迎えた北海道。この地は、1970年代まで、特に道東地区はどこもかしこも砂利道ばかり、まさに道内全体がさながらオフロード天国だった。100kmを超える林道がそこら中にあったのだ。近年は舗装化が進み、林道もめっきりと少なくなったが、残存する林道の数はまだまだ本州の比ではない。

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いざ、心踊る北海道の林道へ

林道の入り口に立つと、「よし、いよいよだな!」と、少しの緊張感となんかとても嬉しい気分とが入り混じって、“弱”戦闘モードで林道に入って行く。

我々にとっては嬉しい北海道の林道だが、3年前に道東を襲った集中豪雨でかなり広域の林道が崖崩れや陥没で寸断状態となり、今も「通行止め」の状態が続いていて潜入の場合は若干の警戒が必要。携帯は不通、ガソリン補給も不可、熊出没のリスクも大、ゆえに必ず2人以上での進行を望みたい。

さてさて。「美深」のゲートから林道に進入したCRF450Lと私である。同行の仲間は、先述の「Nouthern1000Rally」に出場し、選択ルートに林道を志願した11名の精鋭たち。マシンはCRF1000Lアフリカツイン、CRF250L、セロー225、GS1200、TT250Rなど様々。

久しぶりの北海道に心が踊った。ダートの入り口から1速→2速→3速…と、モトクロスばりのシフト
UPで大地を蹴ったのだったが、デジタル表示のスピードメーターは3速ですでに60km/hをオーバー! 「おいおい、ちょっと気合い入れ過ぎじゃないのか?」と自戒の心が生まれた。誰しも最初は必ず気持ちが逸るのだ。「ここは冷静に、冷静に、このままじゃそのうち必ずぶっ飛んじまう!」と、次の4速はハーフスロットルで流した。

CRF450Lのエクゾーストサウンドは大自然の中を走るに相応しい静けさと軽快さ(その中にある何とも頼り甲斐のある低トルク音も手伝って)で好感度はMAX(10/10点)。

やがて前方に緩やかに登る左コーナーが迫って来る。コーナーに進入しつつ3速へシフトダウン。バイクを寝かし、ハーフスロットルからリアタイヤのグリップを感じながらの、微妙なアクセルワークで(リアタイヤを外側へパワーを吐き出すような感覚で)左コーナーを格好よくクリアする。そして再び、今度は右コーナー、同じ感覚で右コーナーもクリア。続くストレート。そしてまた左、右、ストレート。

道は緩やかに下って川へ。10m程の橋桁のないコンクリートの橋を渡る。渡りながら、多分、この川でフライを振ったら、きっと沢山のオショロコマ(蝦夷イワナ)が「入れ食い」状態なのだろう、と後ろ髪を引かれる気分で走り去った。

これも一つの北海道の林道の魅力だろう。沿道は北海道名物の大きなフキの葉のストリートである。

低〜中速域が扱いやすい。林道ではほぼ満点のCRF450L

「ザッ、ザッ、ザッ」と、フロントタイヤが路面の石をリズミカルに、小気味好く踏みしめる音。マシンがこんな感じで軽快に走る感覚の時は、快調に“乗れている”時だ。

CRF450Lのハンドリング・フィーリングは極めてニュートラルで落ち着いていた。例えば石が浮いていてガレたコーナーでも、一見パニックになりそうな泥濘のコーナーでも、黙って、静かに落ち着いてコーナーリングが可能なのだった。ハンドリングの好感度は高い(10/10点)。

次に、走りのパワー&トルクの感覚は、一体どうだったのだろう? 何といってもこのマシン、母体(というより実の正体)は現行モトクロッサーとしての最先端ハイメカニズムと最新のパフォーマンスを誇る“フラッグシップマシン”CRF450Rの直系モデルなのだから、その性能は言うに及ばず「最高水準」のものである。

CRF450Rの最大出力が41.5kw/9000rpmで、最大トルクが50.7Nm/6500rpmであるのに対して、CRF450Lは最大出力は18kw/7500rpmで、最大トルクは32Nm/3500rpmと言う数値で示すように、CRF450Lのエンジン特性はストリートユースにしっかりとモディファイされ、僕たちの普段走る一般道(そして林道=クロスカントリーロード)には、とても走りやすいようにセッティングされたものとなっている。

すなわち、先述のコーナリング中の低〜中速域への立ち上がりはなんともスムーズなもので、現代オフロード車の進化の様に目を見張ったほど(レベル10)。そして、(多分、苦手と予想した)広々とした草原や広場でトライアル車よろしく、低回転域でのんびりとトコトコと走る低速走行も、全く問題なし。ただし多少のクラッチ操作は時として必要だった(レベル9)。モトクロッサーのようなレーシングマシンにはこんな走行は出来ない。

もちろん、それとは対照的なモトクロスさながらの”ギンギンな走り”は「CRF」の最も得意とするところだから、決して期待を裏切ることはない。が、この辺りの味付けも「450L」の肝! 初〜中級者向けの安全セッティングとなっていて、よりアグレッシブな走りを好むライダーには少々のもたつき感?が印象として残るのかも知れない。

然るに、”じゃじゃ馬走り”は僕たちのような平均的な中級ライダーには十二分な好感度でレベルは
10だが、より戦闘的上級者にはレベル8〜9かも知れない(但し、セッティングで如何様にもなる)。

そんな北海道の”皆んなで走れば怖くない”楽しい楽しい林道走行は、「函岳」への分岐となる「加須美峠」を越え、玉砂利ザクザクの手強いつづら折れを抜けると、これぞ北海道! と言った真一文字のフラットなダート道となって「歌登」まで62km。仲間たちと共に一人の転倒者も出さずに無事に走り切り、ついに青々と広がるオホーツクの海に出た。

vol.3に続く!