数年前から、セロー250ユーザーの間で話題になってきた「パワービーム」。ヤマハ純正、ワイズギアの取り扱いで出ているだけあって信頼性は抜群、フレームのたわみを押さえてくれる、いわば四輪のスタビライザー的な商品なのだが、セローが昨年フルモデルチェンジしたことを受け、このパワービームもリニューアル。名称も変更されて登場したのだ。
パフォーマンスダンパー
メーカー希望小売価格:30,240円(本体価格:28,000円)
フレームの違いなんて、なかなかわからないだろう…という話もよく聞く。ただ、このパフォーマンスダンパーに関しては、日高2デイズエンデューロに参戦した鈴木健二が装着していて、高評価をしていたことで人気爆発。鈴木によれば「丸太などにフロントを当てにいくとき、がっしりしたフィーリングになって、安定する。まっすぐ越えることがしやすくなる」とのことだった。
ボルトオンで簡単装着
編集部でも、実際に装着。難しいところは無い。まず、車体左側メインパイプとダウンチューブに専用のステーを取り付ける。
後ろ側のステーはレギュレーターのベースと共用。
あとは指定トルクで締め付ければOK。フレームメンバーなので、このトルク管理で制振も代わってくるはずだ(たとえばモトクロッサーは、エンジンマウントのボルトのトルク管理だけで、曲がりやすさが変わるくらい、シビア)。
神経質な固さはなく、芯が出るような感じ
実走したのは、群馬県日野カントリーオフロード。
正直、のりはじめてすぐに感じるくらい、感触が違う。乗り込んできてやれてしまったバイクから新車に乗り換えたときに、がらっとフィーリングが変わるのがわかるだろうか、あのくらいの変化を感じる。
とはいうものの、神経質さを固さで感じることはなくて、柔らかかったセローのフレームに、しっかり感が出てきたフィーリングだ。たぶん、長くセローに乗ってきた人ほど、この違いはわかりやすいと思う。
鈴木健二の言う、セクションを越えるときの効果もとてもわかりやすい。日野のモトクロスコースは、細かいギャップが多いのだけれど、これらをセローでクリアしようと思うと、スタンダードではスピードに乗っていればいるほどフロントが落ち着かない動きをし出す。PDを装着すると、これがかなり収まる傾向に。ガレ場でも同じような傾向を感じた。林道ツーリングが好きなライダーにも、これだけガレでよければオススメできる。ガレでスピードを落とす要因を作りづらいので、かなり楽に走破できるようになるだろう。
高速走行では、まる別のバイクになる
僕は、セロー250で東京〜美深(北海道)往復をしたり、結構なロングをこなしてきたから、セローの高速道路でのフィーリングはよく知っている。山に気軽に入っていけるだけの、アクティブさが売りなだけあって、250ccのアドベンチャーバイクには高速域の快適性では勝てない。先の東京〜美深でも、相当に疲労した。
スタンダードで感じるのは、100km/h付近での緊張感だ。荷物を積んでいるとより顕著だが、ほんのちょっとの外乱でフレームのよじれ方向の振動が、かなり強く出てしまう。これが、緊張感につながり、結果疲労を感じるのだ。
ところが、PDをいれるとまったく別のバイクだと思えるレベルに、しっかりする。スタンダードで感じたよじれの振動はなく、250クラスのアドベンチャーなみに、ぴたっと安定するのだ。無理矢理ハンドルをこじるような動きをすれば、スタンダードと同じようなよじれの振動が出てくるのだけれど、ほとんどその傾向は見られないし、速いスピードでの旋回もびたっとキマル。後日、新東名高速の110km区間でも乗る機会があったけど、まるで100km/hと変わらない。スタンダード比でいえば、110km/h=80km/hくらいの安定感なのだ。
こちらは、パワービーム時代の映像PVだが、乗ると如実に感じることができる。
硬くするのではなく、落ち着かせる
パフォーマンスダンパーの素晴らしいところは、フレームを硬くするわけではないことだ。フレームの剛性は、とてもわずかなことで乗り心地に直結する。逆に、それだけフレームはライディング中にたわんでいるということでもある。
もし、このパフォーマンスダンパーのところにダンパーではなく鉄をいれたら、ただ単に硬いフレームになってしまう。せっかく、ボックス型に組んでしなるフレームを作り上げたセローのよさは、まるでなくなってしまうし、コーナリングのきっかけをつかみづらくなってしまうはずだ。
こちらは、昨年、JNCCでAAライダー西森裕一がYZ250FXに装着していたパフォーマンスダンパー。特に、しなりづらいアルミフレームでは、使いようによって鉄っぽい特性が出るのかもしれない。
一度PDを装着したセロー250に乗ったら、きっとその虜になると思う。そのくらい、感じ取れるメリットは大きかった。