CRF450Lに対して「RALLYが出るならほしい」という声も少なくない。本来的にいえば、ダカールを走るファクトリーバイクCRF450RALLYはまったくコンセプトが異なるオリジナル設計のラリーマシン。フレームも違えば、エンジンに至ってはDOHCを採用している。方向性が違うマシンを、RALLYへ進化させることがあるだろうか。

ただ、このLに気になる箇所があるのだ。

これは…なんだ?

このフレームのネック部分は、CRF450Rと異なるパーツだ。Rの場合、かつてステアリングダンパーがスタンダードでついていた名残としてボルト穴が、このネック部分にある。実際、現CRFにもステアリングダンパーが装着可能だ。

Lにも似たボルト穴がある。しかし、Rと同じものがついているのかと思いきや、よくみると位置も違えば、形状も違うし、2つある。

ご丁寧に面取りまでしてあるのだ。さらに言えば、リブが強靱だ。

この箇所にある程度の重量物を装着するとすれば、想像がつくのはラリータワー。ラリー用途を見込んでという考えよりは、ラリー仕様開発を見込んで、というほうが妄想としては楽しい。

さらには、穴にはネジ山が切ってないが、この穴を加工してラリータワーを装着するモディファイも容易だろう。現時点ではあまり多くないものの、ラリーモディファイのベース車として考えたら世界的に市場を活性化させる可能性もある。

6速ある理由

妄想を進めてみよう。

なぜ、CRF450Lが6速を装備したのか。これも、もしかするとラリーレプリカとしての素質なのではないかと言う気がしてくる。

世界のラリーでは、ナビゲーションタワーは規格がない

ラリーのナビゲーションタワーに関するパーツを取り扱っているReinforcementの篠原氏に話を伺った。
「KTMなどのストリートモデルを派生させる車種には最初からフレームネックにピボットをつけた状態でフレームを作っている車種も多いです。DIYでラリーマシンを製作などという事を実戦しているユーザーもほとんどがハンドルマウントなので、今回のフレームピボット自体にマシン製作に夢ふくらませるユーザーは本当に数えるほどしかいないとは思います」

先月連載が好評だった、弾丸ママの記事でもうなぎ工房さんによるナビゲーションタワーのモディファイを取材している。CRF250RALLYのスタンダード車は、ツーリングのナビなどを取り付けやすいようにハンドルと同じ径のパイプをメーター上に据え付けてあるので、こちらも比較的ナビゲーションタワーを仕立てるのはやりやすいと言える。

「規格という意味で共通寸法があるのは、ロードブックホルダーを固定するパイプの径と、トリップメーターを取り付ける2つの穴ピッチぐらいです。パイプ系は22パイの時代のハンドルのブレスバーの径(16.0mm)に、トリップメーターの穴間ピッチはICOの取り付けピッチぐらいでしょうか。ロードブックホルダーのバックプレート形状もそうですね。ラリーにおいては装着率が100パーセントといっても過言ではなかったMDの外形形状がそれです。KTM RALLYが純正採用して以来、世界標準になっていました。昨年MDが製造を辞めて廃業してしまったので、現在はその形状で生産しているMIGTECが引き続き標準規格となっています。ここ数年はF2Rのロードブックが席巻しています」と篠原氏。

今回、CRF450Lに据え付けられたダボ穴に関していえば、明確にラリー用の規格であるとは言いがたい。もし、CRF450Lをラリー仕様にしようと思ったら、ベース車としてはとても優秀だろうというのが、篠原氏の見解だ。

ダカールにCRF450Lベースで参戦するなら

現時点では、ホンダ車でダカールラリーを走ることはとてもハードルが高い。もし現行のCRF450RALLYを買えるとしたら、1000万円は下らないのではないか。しかし、ラリータワー分のあと30万円増しで160万円程度で、本格ラリーレプリカが出たとしたら。さらに、公道での耐久性を併せ持ち、ダカールで求められる8000kmオーバーの走行をクリアできたとしたら(すでに、CRF450Lは30000kmノンOHをうたっている)。ラリーという競技が、富裕層の手を少し離れて、一般化するのではないだろうか。そんなダカールイメージをもって、第二のアフリカツインの意思を継ぐブランド「CRF450RALLY」が世に出るなら、我々は心底ホンダを応援したくなるだろう。