ラリーもLEG3を数え、ついに折り返し地点。タイから、このラリーのハイライトである、カンボジアへ入国する。旅団はアンコールワットをはじめとする遺跡群を抜け、首都プノンペンを目指す。

ムースが良い感じに仕上がってきた…

ラリーも3日目、おおよそ1000km弱を走ってきた増田まみのCRF250RALLYだが、こちらはダンロップのムースを使用している。「2000kmもたないなんてことは、ありえない」と関係者に言われたと、お墨付きのムースだが、ラリー序盤は新品だったこともあって圧が高い状態で走行していた。

通常、エンデューロでもムースは新品より少し使い古してへたらせたほうが、グリップ感が増して扱いやすい。もちろん好みによるところで、欧州のトップライダーは新品のハリのあるムースが基本だったりもする。が、増田の好みは圧低めのへたったムースだ。

「かなりいま、いい状態になったので、できればタイヤはこのままいきたい(用意してきたタイヤは、すでにホイールに新品ムースで組み込んだものだ)」と増田。タイヤの消耗具合も、これなら最後までもつかもしれない。今のところ、ひどい雨に祟られたらタイヤを換えよう、という作戦。

1日のスタートは、ホテルから。リエゾンを抜けて毎日SSのスタートを目指す。この日は、越境してタイからカンボジアへ入国する日なので、しっかり余裕をもったスケジュールが組まれていた。SSは、国境より前に設定され、80kmほど。天気もほどよい曇り加減で、28度くらいの気温。快適そのものだ。

インドネシアの女性ライダー、アユと国境までランデブー。「SS終わってから余裕もあったし、インドネシアの人達とご飯食べてました!」と増田。余裕しゃくしゃく。

ちなみに、インドネシアからはアユ・ウィンダリと、イルマ・フェルディアナの女性コンビが参戦していて、ラリーに花を添えている。

バイクの通関書類をもらって、いざカンボジアへ!

CRF250RALLYは、自転車のように乗るとキマル

「バイクにもだいぶ慣れてきました。こうしたら、こうなる、というか挙動を理解することができてきましたね。

ローダウンでどうしてもサスペンション性能が犠牲になってしまっているのですが、これは自転車のように衝撃を逃がしてあげることでクリアできるようになってきました(増田は、MTBダウンヒルで世界を舞台に活躍した経験がある)。穴ぼこやギャップにあわせて荷重を「抜く」んですよね。

1日目でいろいろ起きたトラブルも、自分でマシンにあわせることでマシンへのダメージを抑えることができるようになってきたというか。

すごい気持ちいいサンドが時折あって、思いっきり鋭く曲がろうとしちゃったりするんですが、そういうことをしちゃ、ダメですね」と増田。着々と、最終目標のダカールラリーへ経験値を積んでいる。

「ラリーって、かなり敷居高く感じるとおもうんですよ。実際、海外ラリーは高額だし、難易度も高いとも思います。でも、このアジアクロスカントリーラリーは、ある程度のスキルをもっていれば楽しめると思います。エンデューロに取り組んでいる女性なんかにも、オススメできます」と言う。

CRF250Lで参戦している熊田さんに聞く

例年、タイからはCRF250LやRALLYでの参戦が多く、一大派閥となっているのだが、今年はどういうわけかエントリーリストには増田と、CRF250Lで参戦する熊田さん以外いない。

熊田さんは、このアジアクロスカントリーラリーのためにCRF250Lを購入したという強者。「30年前にロシアンラリーに行ったんですが、それからずっとやってみたいなと思ってました。それから結婚して子供も大きくなったので、ようやく来ました。

CRF250Lを選んだのは、いまラリーを走れるバイクは日本にこれしかないのかなと思って。外車でもいいんですが、コスト考えたらこちらかなと。これまでは2ストだったので、はじめて4ストに乗ったこともあってまだ違和感がありますね。パワーは十分です」とのこと。

この熊田さん、ラリーにまだ慣れずコマ図をなかなかうまく追うことができないでいて、SSを途中で離脱する日々を送っている。しかし、アジアクロスカントリーラリーは、全日のリスタートを認めているので、熊田さんは毎日自分のペースにあわせてラリーに挑戦しているようだ。「はやく1日走りきりたいですね」という熊田さんだけど、その表情は決して硬くなく、とてもレースをエンジョイしている模様。

CRF250Lは、ハンドル以外ほとんどがスタンダード。マップケースとラリーコンピューターを簡易にとりつけるだけで、ラリーに出ることができている。たしかに、この組み合わせは、今日本で揃えるなら最も敷居の低いラリーマシンかもしれない。

総じて、正直なところアジアクロスカントリーラリーはバイク中級者くらいにおすすめしたい競技だ。国内のエンデューロや、ラリーイベントに少し出てみて「悪路を走ること」に慣れていれば、楽しむことができるはず。

カンボジア、拡がる大自然

カンボジアに入ってからは、ホテルまで2時間ほどのリエゾンをひたすら走る。ある意味、このLEG3はレストデイに近いスケジュール。

カンボジア西部から入国した一行が目にしたのは、見渡す限り拡がる大草原。70年代に痛ましい内戦を経ているこの国は、GDPでこそ隣国にだいぶ差を開けられていて、通貨も米国ドルが流通している有様だが、手つかずの自然はラリーのクライマックスを予感させる。

カンボジア側、国境付近で売っていた謎の魚。カンボジアは、魚をよくたべるらしい。国境を越えたとたんに、物価が異常に安くなり、SIMカードは80バーツ(約240円)、ビールは10バーツ(約30円)。この魚の串も、10バーツだ。

宿泊は、シェムリアップのホテル。アンコールワット観光の拠点となる街で、明日は遺跡群を抜けるリエゾンをはしってからSSに入っていく。