JNCC Rd.5爺ヶ岳にて、発表からたった4日、YZ85がレースデビュー。仕掛け人は、エンデューロキング、鈴木健二だ。

いたずらな顔をしてるのは、このゼッケンをレース1時間前におもむろに貼り替えだしたから。

いつものYZ125Xは、テント内に準備万端で納まっているところがニクイ。

完全スタンダード。1000km耐久テストに耐えたらしい

レース直前にキャッチした本番車がこちら。AA1クラスのゼッケン色と違うのは、間違えたから(てへ)とのこと。3時間もの間走るため、準備はしっかりしてきている。たとえば、リアタイヤの中身は、21インチのムースを切って16インチ用にカスタマイズ。アンダーガードもYZ125用のAXPを切り貼りして装着している。ラジエターには、エバンスが入っていて、鈴木の全開走行にも耐える水冷周り。

ハンドルは、前後で位置を選べるようになった。大人ポジションに変更済み。

ZETAのピボットレバーなど、抜かりなし。

YPVSを装着したのが、今モデル最大の特徴。低中速を補っている。しかし、これまでクラッチカバーがクランクケースカバーと一体だったものを改良して、クラッチの交換を容易にしたりと、リリースに書かれていない部分もふんだんにグレードアップ。ユーザー達の声を反映している。

鈴木はYZ85の開発に携わっており、1000km耐久テストもクリアしていると豪語。こんな小排気量の高回転マシンが、1000kmも耐えるのだ。にわかに信じがたいが、ヤマハクオリティすごい。

いつもより、全開男

低速あるよ! のアピールか。

スタートは、揉まれつつも好位置につけた鈴木。9番手でオープニングラップを上がってくる。今回の爺ヶ岳は、ガレを全面的に重機で転圧していて、もしかしてこれってYZ85に有利なのではと思いきや、もちろんそんなことはなく熱中症予防の施策だ。

見ての通りかなりコンパクト。爺ヶ岳名物のガレでも問題ないように、あらかじめ慣らしたサスペンションを用意してきたとのこと。とはいうものの、19インチではかなり難しいことは明白。

石戸谷蓮などの若手と争うシーン。上りでは石戸谷に分がある。ウッズでは、鈴木のスキルが光った。給油回数は、当初2周に1回を予定していたが、様子をみて3周に増やした。それでも、相当な負担だ…。

「去年の日高でセローに乗った健二さんに負けたのと同じ気持ちになりました。壊れるくらいの全開でヒルクライム、ガレはレブ当たりっぱなしでしたね…。バイクっていきなり高回転にはいっちゃうとひっかいちゃうだけなので、上らないんですが、健二さんはうまく上っていきました。低速、しっかり出ているからでしょうね。僕もYZ85に乗ってたことあるんですが、ほんと低速がなかったんですよ。新型ならビギナーにも乗りやすいでしょう」と石戸谷は言う。

ベンチマークはKTM、勝てるYZに仕上がった

現在、この85ccクラスをモデルチェンジし続けているのは、KTMとハスクバーナだけだ。当然、その分戦闘力は非常に高く、ただし価格も高価である。このYZは価格もKTMに思い切りぶつけてきたもので、ベンチマークもKTMだと言って間違いないだろう。

常にオートバイは値段が上がっていくが、これは世の中の貨幣価値の推移によるもの。実は、高価な素材を使わずとも、再設計してしまえば値段は上がってしまう。

今回のYZは、YPVSを装備したことが最大の特徴だ。これまで排気バルブを持たなかったYZは、特性を変化さえづらく、パワーを求めれば低中速を失ってピーキーになっていくマシンだった。速いが、扱いきれるライダーは選ばれる。その欠点をしっかり補うことが大事だった。

「幅広いライダーに乗ってもらえるマシンです。ただ、低中速が出たことでコーナリングは旧モデルとはまったく違いますよ、コーナリングスピード自体がぐっと上がっている。それと、低中速が出たことでジャンプの斜面でもたつくようなことが無くなったので、ジャンプでのミスも断然減るはず。実際、このマシンのタイムはモトクロスで、しっかり出ていますから、必ず乗りかえると体感できると思います。

で、低中速が出たことでエンデューロにもおすすめできるバイクになりました。速さと、扱いやすさをしっかり持ってることが、とても大事なんです」と鈴木。それを証明するかのように、今回のレースは爺ヶ岳の難しいラウンドであっても総合5位。ガレの鬼のようなスピードと、親の敵かと思うほどのスロットルの開けっぷり、どこまで順位を上げられるのかという期待で、会場はめちゃくちゃ盛り上がったのだった。